スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『和食の知られざる世界』 辻芳樹

『和食の知られざる世界』(辻芳樹 著)という本があります。
筆者辻氏は、皆さまご存じ「辻調理師専門学校」の校長にして、辻調グループの代表をされています。

和食の知られざる世界 (新潮新書)和食の知られざる世界 (新潮新書)
(2013/12/14)
辻 芳樹

商品詳細を見る


本書は以下のようなコンセプトで書かれております。

料理研究家として知られる辻静雄を父に持つ著者は、幼い頃から味覚の英才教育を受けてきた。そしていま、世界が賞賛する「和食」の未来に大きな希望と一抹の不安を抱いている。なぜ海外の一流シェフは和食に驚嘆したのか?料理を最高の状態で味わうコツとは?良い店はどこが違うのか?歴史的変遷から、海外の成功例や最先端の取り組みまで、世界の職を俯瞰的に見つめ続けてきた著者だからこそ書けた、和食の真実。(本書 表紙裏紹介文より)





以前当ブログにて、博多ラーメン「一風堂」がニューヨークに進出し、当地のスタイルに合わせた提供の仕方を工夫し、一人単価50ドルという、日本人にしてみれば破格の値段であるにもかかわらず、爆発的な人気を博している、という記事を書きました。その元ネタとなっているのが本書『和食の知られざる世界』であります。
だいぶ前に読了しておりましたが、なかなかご紹介する機会が得られず、今になった次第です。
12月5日に『ミシュランガイド東京2015』が発売されたというニュースを見て、ふと本書を思い出したので、今日はここに雑駁ながら感想を綴ってみたいと思います。





まず一言で申せば、本書は驚くべき密度と正確さで和食の過去・現在・未来を整理する共に、辻氏の和食への愛情と情熱・個人的研究の成果が余すところなく語られているという、近年稀にみる良書であります。





内容を皆さまにご紹介するにあたり、まずは大体の内容を知っていただくために、目次を列挙してみたいと思います。

序章  和食の驚くべき広がり
第一章 「カリフォルニアロール」は和食か?
第二章 和食はそもそもハイブリッドである
第三章 「美食コーチ」の必要性
第四章 和食の真髄が見える瞬間
第五章 ニューヨークで本格懐石を
あとがき


こんなことはまーさんにとっても滅多にないことですが、とにかく、どこか一部分を抜粋し重点的に論じることが不可能な本です。平易な中にも筆者の食に対する知識と思いが全体にちりばめられ、本そのものが、まるで一つの精巧な織物のように出来上がっているのです。





父親の方針で、12歳から27歳までイギリス・アメリカにて留学生活を送った氏は、子供の頃から「異文化の中の和食」を強く意識しつつ生きて来ました。

かつてイギリスにおいて、ステイ先のご夫婦に「魚の出汁」が全く受け入れてもらえなかった経験を持つ辻氏。しかし現在では辻調グループ代表として、日本人に違和感のない和食テイストが世界を席巻する現状を目の当たりにし、氏は「隔世の感を覚える」と述べておられます。





辻氏の論において、特に面白いと思った部分を以下に挙げます。

和食は次の三つの変化変容を遂げている
1.「ギミック(仕掛け)和食」
  70年代のカリフォルニアロールに代表される料理。
2.「ハイブリッド和食」
  フランス料理など、世界中の料理において間違いなく日本の
  料理文化・技術の影響を受けてそれを外国料理の文脈の中で
  表現することによって生まれた料理。
3・「プログレッシブ料理」
  異文化の中で、その民族が好む味や食感に会うような和食
  を作り出そうとする試み。
 

和食はそもそもハイブリッドである(和食の歴史的特性と変遷)。
・日本には、南北に細長い地理的特性によって生まれた、
 豊かな漁場そして豊かな郷土食、 「自然や季節」に対する
 独特の感性や美意識がある。
・古代においては大陸・巨大文明(中国)の影響を受けている。
・鎖国により和風文化が定着し、江戸という巨大マーケットの中で、
 寿司に代表されるファストフード専門料理が誕生した。
 その一方、別の流れで茶の湯と懐石料理という 
 オート・キュイジーヌが確立した。
・識字率の高さが料理書を生み、江戸時代の食文化を
 ハイレベルなものへと押し上げた。
・明治維新後、「和」対「洋」の概念が誕生した。


総合芸術としての料理を真に味わい、和食の審美眼を磨くために
必要なことは?
・「最高のものから経験する」こと。
・「考えながら食べる」こと(食材の状況、原価の予想、調理方法、
 味付け、サービスの状況とシステム、テーブルの配置、 
 お客の動線、インテリア等々)。
・自分を「無」にしてその料理に臨むこと。
・食事を共にする人を選ぶこと(喋りすぎない、ケンカしない、
 食に敬意を持っている)。
・食事会には6人以上で行かない(和食器は一組五客が基本であり、
 アラカルトで頼む店では6人以上では同じタイミングで料理を提供できない)。
・ここぞという店に出かける時は自分の体調を完璧にしておく。
・店をローテーションする。
・身近に和食のコーチを持つ。
・カウンター割烹において料理人にあれこれ質問する。


和食の真髄が見える店の紹介
・『草喰 なかひがし』
・『壬生』
・『亀谷良長』ブランド『サトミ・フジタbyカメヤ・ヨシナガ』


『ブラッシュストローク』の新たな試み。
ニューヨークの人気フランス料理店『ブーレイ』のオーナーと、
辻調グループとのコラボレーションによって実現した和食レス
トラン。まさに「プログレッシブ料理」を体現するべく挑戦を
続ける、「和」と「洋」の揺らぎの中に浮かび上がった本格懐石
の店である。






昨年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録された和食ですが、その登録に向けて尽力されたのが、この本の著者・辻氏だそうです。
氏は本書のあとがきにおいて、次のように述べられています。

登録そのものを一過性のイベントで終わらせてはいけない。むしろ継続的な継承と発展のために、それぞれが出来ることをそれぞれの責任において荷っていく必要があるはずだ。多くの識者が指摘する通り、二十一世紀の最大の課題のひとつは食糧問題である。(中略)和食文化は確かに素晴らしい。ただ、それを支えている生産の現場が疲弊し、場合によっては消滅の危機にさらされている。この難問に「食文化」を支える私たちも立ち向かわなくてはいけないはずだ。





和食の歴史的背景をきちんと踏まえ、その上で「食のプロ」としてどう生きるべきか、どうしたいか――あくなき探求心を持って突き進む辻氏の姿に、まーさんは心から「本物」というもののすごさを実感いたしました。

ただ一つの事柄を深く掘り下げ追求する氏の生き様は、全くもって驚くべきことばかり。自分には到底真似のできない、雲の上の出来事であるとは感じましたが、それでも、ある種の勇気や生きる力をもらうことが出来た、貴重な読書体験でした。

もし機会がありましただ、ぜひ皆様にも、この「和食の今昔」を論じた本書を手に取っていただければと思います^^


和食の奥深さに思わずうなります・・・
因みに皆さま、今日の献立は??
↓(≧▽≦)↓

にほんブログ村 歴史ブログ 日本の伝統・文化へ
にほんブログ村

応援クリックありがとうございます^^
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

こんにちは。
とても興味深い本ですね。
以前、アーユルヴェーダのワークショップで、食生活をはじめとした生活習慣に、季節や自然を愛でる要素があるのは、聖徳太子に仏教と一緒にアーユルヴェーダが伝わったから、と教えられたことがあります。自然と調和することで、自分自身のバランスを良くするという智恵なのでしょう。
辻先生の論理にもその影響を感じ、とても嬉しくかつ、自分の襟を正したいと思いました。
食事をするときに喋り過ぎない、ケンカしない、わが家でも気を付けています。食事はポジティヴな気持ちで食べないと、良いエネルギーにならないそうですから。

和食の継承と発展の為には、一塊の主婦でも意識的に料理、食事のあり方を、考えていく必要がありそうです。

Re: No title

yuccalina様

こんにちは^^
いつもながら、素晴らしいコメントを寄せていただき、ありがとうございます!

「食生活をはじめとした生活習慣に、季節や自然を愛でる要素があるのは、聖徳太子に仏教と一緒にアーユルヴェーダが伝わったから」とは初めて知りました。なるほどそうだったのですか!
季節を感じ、素材のものを味わい、決して乱獲をしない日本の食の在り方は、世界に誇れるものと確信します。
その繊細な美意識と、自然との一体感の美しさ、ぜひ世界の人々に知ってもらいたいと思います。

「食事中、喋り過ぎない、ケンカしない」ことを、yuccalina様のお宅では気を付けられているのですね。食事はポジティヴな気持ちで食べないと、良いエネルギーにならないとは、とてもよく分かる気がします。目の前の食べ物に最大限の敬意を払う辻氏の姿勢は、本当に見習うべきものがありますね。食との「一期一会」を、ワタクシも大切にしたいと切に思いました。

鮨やラーメン、てんぷら、お好み焼きといった専門料理から、芸術ともいえる懐石料理、さらには列島各地に伝わる様々な郷土料理。これらをワタクシ達が大切に守り、継承し、改革していかなければばらないのだと真剣に考えさせられる本でした。
プロフィール

まーさん

Author:まーさん
息子と夫と私、考え方も行動もてんでバラバラな3人で暮らしています(笑)でも仲良しです。
音楽、映画、読書が好き。芸術鑑賞、外国語、旅行も好きです。ゆ~る・じゃぱんでは、日本大好きまーさんが暮らしのに漂う日本の香り・日本文化をゆる~く綴っていきます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。