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「青葉の笛」~思い出と共に~

  祇園精舎の鐘の声

  諸行無常の響きあり

  沙羅双樹の花の色

  盛者必衰の理をあらはす

  おごれる人も久しからず

  ただ春の夜の夢のごとし

  たけき者も遂にはほろびぬ

  偏に風の前の塵に同じ



ご存じ『平家物語』の冒頭です。
学校で暗誦なさった方も多いことでしょう。

まーさんがこの『平家物語』冒頭と出会ったのは、小学生の頃。
文学好きだった母が諳んじてくれました。

美しい対句のリズム。
漂う無常観・・・無常感。

カッコいい――!!

まーさんは、いっぺんに『平家』の世界に引き込まれました。



それから10年以上たった、ある日の夕方。
母は夕食の支度をしながら、聴いたことのない歌を口ずさんでいました。


  一の谷の軍敗れ

  討たれし平家の

  公達あはれ

  暁寒き須磨の嵐に

  聞こえしはこれか

  青葉の笛



「え、何その歌!初めて聞いた!敦盛最期!?」
まーさんは畳みかけるように聞きました。
その頃はもう、平家物語を原文で読んだりしていたので、
この歌が、敦盛最期に取材したものだと、すぐに分かりました。

母は、
「ああ、これはね、あなたのおばあちゃんが昔よく歌っていた歌よ。
私の子供の頃、よくお勝手仕事の時に口ずさんでいたわね」
と言いました。
ええ~~??そうなの?
何と心に響く歌であることか。

まーさんは一人感動して、更に聞きました。
「二番の歌詞はどういうの?」
すると母は、
「残念ながら、二番は知らないのよ。
というのも、おばあちゃん、一番の歌詞しか知らなくて、
そればかり歌っていたから」
そうなんだ・・・

よし。では自分で調べてみよう!二番、ひょっとしたら三番もあるかもしれない・・・

次の日さっそく調べました。
そして、歌詞付きの楽譜を手に入れました。
曲は二番まででした。
しかしこの二番の歌詞が、一番にも増して「あはれ」を誘うのです。

すぐに母に楽譜を見せました。
母はとても喜んで、
「二番は“忠度都落ち”なのね――
すごいわねえ、こうして母子三代に亘ってこの歌が
口づたえで伝えられて、今日は二番の歌詞まで分かっちゃうなんて・・・
何だか感慨深いわね」
と言ったのでした。



この歌の題名「青葉の笛」
映画「無法松の一生」(1943年)の中でも歌われ、
戦後は占領軍による検閲により、封建的であるとして
歌のシーンはカットされたそうです(Wikipediaより)。




では、倍賞千恵子さんの歌で『青葉の笛』をお聴き下さい。





いかがでしたでしょうか。
『平家物語』――無常の文学であるとともに「あはれ」の文学でもあります。
「青葉の笛」では、その無常とあはれが、悲哀のこもったメロディと共に
心に響きます。


例によって、急な思い付きですが・・・

次回は、より深く「青葉の笛」の世界を堪能していただけるよう、
『平家物語』巻第九「敦盛最期」・巻第七「忠度都落ち」
を、再びまーさん超訳!でお送りしたいと思います。



皆さまが、少しでも『平家物語』にご興味を持っていただけましたら、幸いです。



*参考文献『日本古典文学全集29・30 平家物語』(小学館)



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非公開コメント

No title

楽しみですね。まーさんの超訳。

わたしは、明石に住んでいて、須磨寺はお気に入りのお寺さんです。

何度も足を運んでいます。

敦盛の最後の像は、須磨寺にあります。(青葉の笛の中に出てきているもの)



「鵯越」という駅も神戸電鉄にはありますし、須磨には、一ノ谷というバス停もあります。

わたしの近辺は、源平の時代を想わせるものが多数あり、その点でも超訳楽しみにしています

Re: No title

まるまるまるた様

明石にお住まいなのですか!!

では、『平家物語』はとても身近な文学ですね。

須磨寺、鵯越という駅、一ノ谷というバス停・・・
生活の中に、源平時代の香りが息づいているのですね。

そのような方が読んで下さるとは、いささか緊張しますが・・(汗)
頑張って超訳してみたいと思います!

No title

あはれの文化良いですよね。日本人ならではな感性、大好きです。
平家物語の冒頭は、言葉の流れも何もかもが美しい。
お祖母様から引き継がれてゆく歌、これからも伝えて行きたいですね。
私は土佐日記や伊勢物語専攻なので、平家物語にはあまり詳しくないのです。まーさんの平家物語超訳でおべんきょしたいと思います♪

語り継がれる、語り本

まーさん様

「語り本」的要素の強い「平家物語」。
これにまつわる「歌」が、親から子へ、再びその子へ、語り継がれる様は、やはり「趣」がありますね。

優れた文学作品は常に進化して、成長を続けるものです。
一人歩きしてしまうのでしょうか。「まーさん超訳」楽しみにしています。

Re: No title

くるみ様

くるみさん、専攻が『土佐日記』『伊勢物語』なのですか?!
ワタクシも、最終的な専攻は「平安時代前期」でした。
一緒ですね~、すごい偶然ですね~(@_@)
何だかとても嬉しいです。

『平家物語』専門外ですが、大好きです。
楽しく超訳していきたいと思います。

ところで、ワタクシの呼び名、まーさんで結構ですよ(^^)
HNに「さん」を付けてると、呼び方に困りますよね~(汗)

Re: 語り継がれる、語り本

ハゼドン様

「語り本」という専門用語をご存じとは・・・!!
ハゼドン様、日本文学にとても精通していらっしゃるのですね。

祖母は「青葉の笛」を、尋常小学校で習ったとか。
(うろ覚えですが、そんなことを聞いた気がします)
少し前の日本人は、『平家物語』のような優れた古典を、
様々な形で日常的に共有していたのですね。

琵琶に乗せての語る、語り本としての『平家物語』も
聴いてみたいところです(まだ、ナマで聴いたことがありません)!!

No title

私は古文には詳しくないですが、流石に平家物語の冒頭は知っていました。古文よりは漢文の方が少しはマシな理解力だったので、前世は中国人だから古文はわからん!とσ(^_^;)

まーさん様は、古文を読みこなされるなんてかっこいいですね。

平家といえば、あちこちの地方に流れてきた平家の末裔のお話がありますよね。いったいどのくらいの人数の平家の方が、地方に身を隠されたのでしょうか?

No title

こんばんは。
まーさん様の超訳、とても楽しみです。
平家物語は冒頭しか知らない口で
古典の苦手なとーさんにもやさしく、しかも面白い。
まーさん様のブログで楽しく勉強させて頂きます。(^ ^)

No title

まーさん、こんにちは♪
平家物語ですか。高校の現国の授業を思い出しました。
日本文学はとは無縁のような生活を送っている今日この頃です・・
日本人なのにいけませんね。私も少しまーさんのブログで、勉強したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(^^)

Re: No title

凛様

ワタクシ、大学での専攻が日本文学だったので、古典文学には少々馴染みがあるのでございます(^^ゞ
それより凛様、前世は中国人だったのですか!!
そういうのは、ご自分でお分かりになるのですか?
・・・すごいですね~~~(驚)

平家落人の里って、日本全国に沢山ありますよね。
火を使うと源氏の武者にばれるから、そうならないための工夫が今に伝わっていたり・・
凛様のおっしゃるように「一体落ち武者って、どの位いたのでしょう??」デス(^^ゞ

Re: No title

アヒルのとーさん様

「楽しみ」と言っていただいて、とても嬉しいデス!!

面白く読めますよう、頑張って超訳してみたいと思います(≧▽≦)

・・・とかいいながら、実は超訳、自分が一番楽しんでいるような気がします(笑)

Re: No title

yoyo様

わ~~~!!
ワタクシのブログに訪問いただき、ありがとうございます!!
とても嬉しいデス(*^^*)

高校の現国では、小林秀雄の『平家物語』についての評論が、
必ずと言っていいほど取り上げられてますよね(^^ゞ
なぜなのでしょう???
(内容は素晴らしいですが、かなりの悪文で、読みづらいと思うのです(汗))

ワタクシはyoyo様のブログから、フランスの香りを存分に味わわせていただきたいと、
楽しみにしております。
これからもよろしくお願いします!

すみません

すみません、前世は中国人・・・ってのは、古文が苦手な私の単なる言い訳です(汗)。

私の前世が中国人だったこともあるのかもしれませんんが、現在のところ、非常に低い可能性な気がします。
前世は、知りたいなと思ったこともありましたが、今は、別に知らなくても今が幸せならいいなと思います。

Re: すみません

凛様

そうですか(笑)
わざわざお答えいただいてありがとうございます(^^)

前世は何者だったのか、興味はありますが(^^ゞ
凛様のおっしゃるように今が幸せなら、それでいいですよね。

No title

こんにちは、

わたくしは、平家物語を原文で読めるほど
能力がないのですが、でも好きなんです。
拙ブログの中にぜひとも
まーさんに見ていただきたい絵があるんですよ~
(わたくしのショボイ文はこの際ムシしてください)


http://sadafusa.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22-1

Re: No title

sadafusa様

2012/8/22のブログ、拝見しました~~!

世界の名作シリーズ、ワタクシ図書館で借りて読んでいた気がします。
あの表紙、見覚えあります、懐かしい!!

そして『平家物語』の武者絵。
美しいですねえーー(溜息)
sadafusa様が捨てずにとっておいたお気持ち、良く分かります。

宮尾氏の『平家』を読破されたのですか!その他にも『平家』関連の本をたくさん読まれていて、そんな方にワタクシの至らない現代語訳お見せしたこと、お恥ずかしい限りです。汗顔の至りでございます(@_@)

『平家物語』は、琵琶法師の語りとして世に流布したという側面があるので、原文の美しさ、躍動感は言うに言われぬものがあります。それを皆さまにお伝えしたいと思いつつ・・・う~む、難しい・・・

でも、多少なりとも皆さまが、『平家』に興味を持っていただけたなら、幸いです。

ところで大河の『義経』、ワタクシ欠かさず見ていました~。『平清盛』も見てましたが、視聴率は悪かったようですね。清盛の描き方、意外と良かったように思ったのですが・・・(?_?)
プロフィール

まーさん

Author:まーさん
息子と夫と私、考え方も行動もてんでバラバラな3人で暮らしています(笑)でも仲良しです。
音楽、映画、読書が好き。芸術鑑賞、外国語、旅行も好きです。ゆ~る・じゃぱんでは、日本大好きまーさんが暮らしのに漂う日本の香り・日本文化をゆる~く綴っていきます。

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