まーさん超訳『平家物語~忠度都落ち~』その二
今日は、前々回に引き続き、「忠度都落ち」の第二回目です。
『平家物語』 巻第七「忠度都落ち」 その二
薩摩守(平忠度)がおっしゃったことには、
「ここ何年もの間、三位殿(藤原俊成)に歌のことをご指導願い、
お教えいただいてから、歌のことも三位殿のことも
疎略にお思いすることはありませんでした。
しかし、この二、三年は京都の騒ぎ、各地での反乱が相次ぎ、
これらはすべて当平家の身の上のことでございますので、
歌の道をなおざりに考えていたわけではありませんけれども、
以前と変わらずこちらにお伺いすることもかないませんでした。
わが君、安徳天皇はすでに都をお出になりました。
一門の運命はもう尽きてしまいました――
そのような中、勅撰集(天皇上皇の命で編集された和歌集。
この時、三位殿が撰者に任命されていた)の撰集があるだろう
ということを承りましたので、生涯の名誉に一首でもご恩をこうむり、
入れていただこうと考えておりました。
しかし、すぐに乱が起こって、その沙汰もなく中止になったこと、
私にとって全く大きな嘆きとなっております。
世が治まりましたならば、勅撰のご沙汰がございましょう。
ここにあります巻物の中に選ばれてふさわしい歌がありますならば、
一首でもご恩をこうむり入れていただいて、草葉の陰にても
嬉しいと思うことがありますならば、あの世からいついつまでも、
あなた様をお守りいたしたいと存じます。」
こう言って、長い間に詠んでおかれた多くの歌の中から、
秀歌と思われるものを百首書き集められた巻物を、いざ出発という時、
これを取ってお持ちになったが、それを、よろいの合わせ目から取り出して、
俊成卿に差し上げた。
薩摩守忠度の思いに、三位俊成卿はどう返答するか。
次回、いよいよ最終回です。
*参考文献『日本古典文学全集30 平家物語⑵』(小学館)

にほんブログ村
『平家物語』 巻第七「忠度都落ち」 その二
薩摩守(平忠度)がおっしゃったことには、
「ここ何年もの間、三位殿(藤原俊成)に歌のことをご指導願い、
お教えいただいてから、歌のことも三位殿のことも
疎略にお思いすることはありませんでした。
しかし、この二、三年は京都の騒ぎ、各地での反乱が相次ぎ、
これらはすべて当平家の身の上のことでございますので、
歌の道をなおざりに考えていたわけではありませんけれども、
以前と変わらずこちらにお伺いすることもかないませんでした。
わが君、安徳天皇はすでに都をお出になりました。
一門の運命はもう尽きてしまいました――
そのような中、勅撰集(天皇上皇の命で編集された和歌集。
この時、三位殿が撰者に任命されていた)の撰集があるだろう
ということを承りましたので、生涯の名誉に一首でもご恩をこうむり、
入れていただこうと考えておりました。
しかし、すぐに乱が起こって、その沙汰もなく中止になったこと、
私にとって全く大きな嘆きとなっております。
世が治まりましたならば、勅撰のご沙汰がございましょう。
ここにあります巻物の中に選ばれてふさわしい歌がありますならば、
一首でもご恩をこうむり入れていただいて、草葉の陰にても
嬉しいと思うことがありますならば、あの世からいついつまでも、
あなた様をお守りいたしたいと存じます。」
こう言って、長い間に詠んでおかれた多くの歌の中から、
秀歌と思われるものを百首書き集められた巻物を、いざ出発という時、
これを取ってお持ちになったが、それを、よろいの合わせ目から取り出して、
俊成卿に差し上げた。
薩摩守忠度の思いに、三位俊成卿はどう返答するか。
次回、いよいよ最終回です。
*参考文献『日本古典文学全集30 平家物語⑵』(小学館)

にほんブログ村

- 関連記事
-
- おぼしき事言はぬは
- ま―さん超訳『平家物語~忠度都落ち~』その三
- まーさん超訳『平家物語~忠度都落ち~』その二
- まーさん超訳『平家物語~忠度都落ち~』その一
- まーさん超訳『平家物語~敦盛最期~』その三
スポンサーサイト