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ま―さん超訳『平家物語~忠度都落ち~』その三

今日は、母の墓参で、帰宅が夜になりました。
明日からは台風の影響で、天気は大荒れの様子。
今日のうちにお参りできて、ほっとしております。



さて「忠度都落ち」、今回でいよいよ最終回です。




『平家物語』 巻第七「忠度都落ち」 その三




三位(藤原俊成)はこれ(忠度から渡された巻物)を開けてみて、

「このような忘れ形見をいただきましたうえは、

決していい加減には思いますまい。

そのこと、お疑いなさいますな。

それにしても、あなたが今お越しになったこと、

風情も非常に深く、

しみじみとした思いも特にすぐれて感じられ、

感涙をおさえきれません。」

と仰った。


すると薩摩守(平忠度)は喜んで、

「今は西海の海に沈むのならば沈んでもよい、

山野に屍をさらすのならばさらしてもよい、

もはやこの世に何の未練もございません・・・

それでは――お別れを申します。」

と言って、馬にうち乗り、甲(かぶと)の緒をしめ、

西に向かって馬を進められた。


三位は後ろ姿を遠くまで見送って立っておられると、

忠度と思われる声で、

「前途程遠し、思を雁山の夕の雲に馳す」(*)

と、声高らかに口ずさまれたので、

俊成卿は、ますます名残惜しく思われて、

こみ上げる涙をおさえて邸内に入られる。



その後、世が治まって、三位殿は(勅撰集である)

「千載集」を編集なさったが、忠度のあの時のありさま、

言い残して言った言葉を今改めて思い出して

しみじみとした感慨が深かったので、

あの預かった巻物の中に、入集にふさわしい素晴らしい歌は

たくさんあったけれども、勅勘(天皇から咎めを受けている)の人

であるので、名字を公にせず、

故郷の花という題で読まれた歌一首だけを、

「よみ人知らず(作者不明)」としてお入れになった。


    さざなみや志賀の都はあれにしをむかしながらの山ざくらかな 

    (志賀の旧都は荒れてしまったが、長等山の山桜は昔そのままだなあ)
 
 

その身が朝敵となってしまったからには、とやかく言える

ことではないが、いかにも不本意な、悲しく残念なことである。




(*)『和漢朗詠集』下「餞別」(大江朝綱)の前半を引いたもの。
   雁山は中国山西省にある雁門山。この句は、渤海国に帰る使者を送る際に
   再開の期しがたいことを述べている。







皆さま、いかがでしたでしょうが。
忠度と俊成の細やかな心のやり取りと、『千載集』撰集における秘話。
しばしこの「あはれ」の余韻を、皆さまとともに味わっていたいと思います。




なお、小学唱歌「青葉の笛」二番の後半部分、

今わの際まで
持ちし箙に 残れるは
「花や 今宵」の歌


とありますのは、『平家物語』巻第九「忠度最期」のエピソードを踏まえております。
もし、ご興味を持たれましたら、こちらもぜひ、お読みいただけたらと思います。




数回に亘りまして、まーさん超訳『平家物語』にお付き合いいただき、
ありがとうございました!!



*参考文献『日本古典文学全集30 平家物語⑵』(小学館)



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非公開コメント

No title

朝敵だと「よみ人知らず」になってしまうのが悲しいですが、そのようにしても忠度の歌を『千載集』に取り上げた俊成の心に打たれますね。結果的には、忠度の歌として後世に伝わったわけですけれど。

今日はお天気が荒れ模様ですから、昨日の内にお母様のお墓参りができて良かったですね。

No title

なんかの本で勅勘が解けた時に
「よみひとしらず」を改め「只載(ただのり)」になったと
書いてあったような…。

忠度は清盛にとって、義理の父にあたる忠盛の子になるので、
一応兄弟なのですが、
正妻の子でもなく、一夜の伽をさせた
鄙の熊野の女に産ませた子だったので、
初めて会ったのはお互い成人を過ぎてからだったそうです。

都人として育ったわけでもなく、
きちんとした教育を受けたわけでもなく、
むくつけき野人のような風貌の男が
このように「歌の上手」とはいかなることか、と
平家の一門の方がたは、アタマを捻ったそうです。

わたくしの家の近くには、式子内親王の墓がありますが、
有名な「しのぶれど」の歌にある、内親王の思い人とは
俊成ではないか、という伝説があり、
いまもお墓に絡まっている蔦を「俊成蔦」と呼んでいます。
(でも、本命は法然だったらしい↓)

Re: No title

Ariane様

忠度の名は『新勅撰和歌集』から
ようやく掲載されるようになったようですね・・・

忠度・俊成それぞれの心を思うと、何とも言えない
「あはれ」の気持ちが沸き起こってきます。

昨日も今日も、大変な荒れ模様ですね。
どうぞお気を付け下さいませ。
土曜日は穏やかな天気で、お墓参りにはちょうどよかったです。
ありがとうございます^^

Re: No title

sadafusa様

さすが、『平家』に精通していらっしゃいますね!

和歌にはあまり詳しくないのですが、
忠度の名は『新勅撰集』から掲載されたとか。

同じく、俊成に師事していた式子内親王のお墓が、
家のお近くにあるのですか!
「玉の緒よ」の歌、激しいですねえ~~
ワタクシには詠めない類の歌です(笑)
定家との恋愛、法然への思い、
なかなか逸話の多い方ですね(*_*

斎宮・斎院の関係する恋愛話というと、
『源氏物語』『伊勢物語』などを思い出します。

No title

ああ、スミマセン!ボケてました。
そうそう、「玉の緒よ、耐えねばたえね」の歌です。

しのぶれど、いろにでにけりわが恋は

は平兼盛の歌でした。
あ、この歌も「恋すてふ、わが名は」で歌比べして勝った有名な
歌ですが…

わたくし、和泉式部の歌も好きでして、

あらざらむこの世の他のおもひでに
いまひとたびのあうようしもがな

むかし、あらざらむこの世の他ってなんだ?
と考えていたことがあって、
しばらくしてから
「あの世」だとわかりました。

長くないわたくしの今生の想い出として、
今一度、恋しいあなたと逢瀬をもちたいワ

激しいうたですねぇ~

天才ですね 笑

No title

残った希少な文献から、
こうやって秘話が伝えられていく。

昔の方が写本して伝えてくださった
素晴らしいものがたりを、
こうやって超訳してもらって、
また新しい視点で知ることができる。
とてもしあわせなことですね。

まーさん、ありがとうございます!

Re: No title

sadafusa様

和泉式部も、良いですねえ。
紫式部は日記の中で、彼女をこき下ろしてましたけど(笑)
あれは、”愛に生きる女性”に対する激しい嫉妬心から
来るのではないかと・・・

林真理子氏も仰っていましたが、
やはり「文学をやる人は、どこか病んでいる部分がなくてはできませんよ」と。
フツーじゃだめなんですよね(^^ゞ

Re: No title

くるみ様

後世に残る古典文学の、時代を超えた力には圧倒されますね。
現代語訳はもちろん、能や歌舞伎、現代劇、映画、ドラマ、漫画など、
ありとあらゆる形で、人々がその物語を皆に伝えようとする――
それだけ人間の本質を突いた、心揺さぶられる作品だ、ということなのでしょう。

ワタクシの超訳は、本当に拙いものですが、それでも皆様の心に
何らかの思いが残されたならば、とても嬉しいことでございます。
プロフィール

まーさん

Author:まーさん
息子と夫と私、考え方も行動もてんでバラバラな3人で暮らしています(笑)でも仲良しです。
音楽、映画、読書が好き。芸術鑑賞、外国語、旅行も好きです。ゆ~る・じゃぱんでは、日本大好きまーさんが暮らしのに漂う日本の香り・日本文化をゆる~く綴っていきます。

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