スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『100分de名著 古事記 第二回「文化と農耕の起源」』

本日は、二十四節気の「寒露」にあたります。
いつも参照させていただく本『日本の七十二候を楽しむ―旧暦のある暮らし―』
(文 白井明大 絵 有賀一広 東邦出版)から引用しますと、寒露とは
「露が冷たく感じられてくるころのこと。空気が澄み、夜空にさえざえと月が明るむ季節です。」とあります。
しかしながら、今日の暑さ、まるで夏に逆戻りしたようです。午後になって風がいくらか涼しく感じられてきましたが、それでもまーさんの今日の服装は半袖にショートパンツ(^^ゞ全くの夏服でございます。



              ◇



さて今日は『100分de名著 古事記』の第二回目、「文化と農耕の起源」について綴っていきたいと思います。





<三柱の貴神誕生と、スサノヲ・アマテラスの対照性>
イザナミから逃げて戻ったイザナキが、ミソギによって生み出した三柱の貴神は、それぞれ次の場所の統治を命ぜられた。

アマテラス:高天の原の統治
ツクヨミ:夜の国の統治
スサノヲ:海原の統治

しかし、弟のスサノヲだけは「母に会いたい。母の国へ行かせてほしい」と泣きわめくばかりで統治せず、その結果、国が乱れてしまった。怒ったイザナキは「どこへでも行け」とスサノヲを見放し、彼は旅立つ前に姉のアマテラスに別れを告げるべく高天の原へと向かう。しかしここでもスサノヲは、アマテラスに謀反を疑われ、「誓約(ウケイ)」と言われる占い(コイントスのような勝負。)に勝つことによって、ようやく謀反の気持ちがないことを証明する。しかし、「誓約」に勝ったスサノヲは傍若無人の限りを尽くし、心を痛めたアマテラスはとうとう「天の岩屋戸」にこもってしまう。すると天地は暗闇となり、災いが起こり、困り果てた神々は、岩屋戸の前でにぎやかな宴を催し、何事かと覗いたアマテラスを再び外に連れ出すことに成功する。こうして世に光が再び戻ったのである。一方スサノヲは厳しく処罰され、高天の原を追放されることとなった。


ここで指南役の三浦佑之氏は、アマテラスとスサノヲがあらゆる点で対照的であることを指摘されています。図解すると以下のようになります。

アマテラス(姉)=秩序    スサノヲ(弟)=無秩序
・正当            ・異端
・女性性           ・男性性
・太陽            ・暴風
・調和            ・暴力性


そしてスサノヲは「少年的なところがある、一番魅力的な神」であること、またアマテラスは「自尊心の強い、最も偉い神」であるが、その一番の神が、天の岩屋戸の一件ではまんまと騙されて、外に出てきてしまう面白さを、語っておられました。

『古事記』の面白さは、「正当かつ最上の神であるアマテラスを崇め、異端であるスサノヲを悪の代表とする」と言ったような単純な枠にはめない所にあるのだと、氏の指摘でまーさんは気づきました。またそれは、善悪・正邪といった二項対立に捉われない日本人の物の考え方の基本を、表わしているようにも思いました。





<オホゲツヒメとスサノヲ―食の起源―>
高天の原を追放されたスサノヲは、地上に戻る途中空腹のため、食を司るオホゲツヒメを訪ねる。ヒメはスサノヲのために次々とうまい食べ物を出してくれたが、なぜそのようにもてなすことが出来るのか不思議に思ったスサノヲは、ヒメがどのように食べ物を用意するのか、厨房をのぞいてみた。するとヒメは自らの口・鼻・尻から食べ物を生み出していた。「そのような不浄なものを食わせるとは!」と怒ったスサノヲは、オホゲツヒメをめった切りにし、殺されたヒメの体からは、「蚕・粟・小豆・麦・大豆・稲」が生まれた。これが五穀の起源である。


この話について、三浦氏は「オホゲツヒメというのは元々「無秩序な状態で食べ物を生み出してくる神」であったが、スサノヲがこれを殺すことによって「種」を手に入れ、新しい「生産(秩序)」が始まったのだ」と述べておられました。
またこれは、「死や災いによって次の物が生まれてくる。死ぬと次の物へ転嫁してゆく。新しい生が生まれる」ことを表した話であるとも指摘されていました。

無秩序であった食の在り方が、種の制御によって秩序だった形へと変化してゆく。それを神話では上記のように表したのだという説が、まーさんには非常に面白く感じられたのであります。





<ヤマタノオロチ―農耕の起源―>
地上に降りて、出雲国の肥の川を遡ってゆくと、川のほとりで老夫婦とその娘が泣いていた。理由を尋ねると「8人いた娘は皆ヤマタノオロチに食われてしまった。今またこの末娘が食われようとしている。」と老夫婦は語った。そこでスサノヲは「もしその末娘を嫁にくれるなら、オロチを退治してやろう。私はアマテラスの弟、スサノヲだ」と名乗り、オロチ退治を行う。老夫婦に酒を用意させ、酒に酔ったオロチの首を次々とはね、退治に成功したスサノヲは、末娘(クシナダヒメ)を嫁にもらったのだった。


ヤマタノオロチは「谷八つ分」というすさまじい大きさの化け物ですが、このヤマタノオロチ=大きな川と考えると分かりやすいと三浦氏は言われます。出雲国には斐伊川(=肥の川)という、すごい暴れ川があり、それをヤマタノオロチとして表わしているのではないかと。つまり図式化すると、以下のようになります。

ヤマタノオロチ=斐伊川【自然】
      ⇕
スサノヲ=アマテラスの弟【文化】

「【文化】を身につけた神・スサノヲが、【自然】を知恵によってやっつけた」
というのが、この話なのではないかというのです。
さらに言えば、スサノヲは「献身」からオロチ退治を申し出たのではなく、「クシナダヒメをくれるのなら」という条件付きで退治を行っています。これは「クシナダヒメ」の名前を分析してみると分かりますが、「クシ=霊妙な」「ナダ=田んぼ」であり、「クシナダヒメ=霊妙な田んぼの女神」の意となる。要するにこの話は、「種を持った男・スサノヲが、田んぼの女神・クシナダヒメと結婚する」という、「農耕の起源」が語られているのだと、氏は指摘するのです。






スサノヲが関わる一連の神話は、「縄文から弥生への移行」「弥生の始まり」を表わしていると、三浦氏は言われます。
そして氏は、「田んぼとは、今の我々からすると如何にも“自然”を表わしているようだが、実は田んぼ=最も自然を破壊した姿・最初の自然破壊・人工物である」とも仰っています。

氏の最後のことば「オホゲツヒメを殺すという血塗られた過去を「種」は持っている。このことが、実は人間の持つ「罪」なのかもしれない」との指摘が、非常に印象に残りました。







天界では無秩序の代表のようであったスサノヲですが、地上に降り立った途端、アマテラスの弟として【文化】のメタファー的な存在となります。そしてそのスサノヲが、種を手に入れ食を秩序化し、また「種」と「田」を結び付け、農耕によって自然を制御する、という展開が、まーさんには非常に興味深く感じられました。

世の中があらゆる意味で飽和状態を迎え、行き詰まりを見せる中、
そこに風穴を開ける一つの方策として「縄文時代」をもう一度検討してみよう、という流れがあるかと思います。
農耕というある種の自然破壊によって、文化的生活を手に入れた人間は、現在に至るまでその自然解体によって、いわゆる「発展」を遂げてきたわけですが、そうした人間のありようの起源が、『古事記』という神話ではこのように描かれているという事実に、とても興味を惹かれます。
と同時に、三浦氏の言に従えば「種を手に入れる=血塗られた人間の罪」とする辺りに、まーさんは(縄文文化の見直しということも含めて)、『古事記』という書物が、現代日本人に訴えかける何かを持っているのではないか、と思う次第であります。




にほんブログ村 歴史ブログ 日本の伝統・文化へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

こんばんは。
小学生の頃、夏休みにテレビでスサノヲが主人公のアニメを
何度か見た覚えがあります。
頭の中で今回のお話と画像がリンクし、とても納得がいきました。
弥生時代の始まりなのですね。(^^)

No title

前のイザナミ・イザナギ伝説は
あまりにギリシャのオルフェウスとエウリディケの話に
似ているので、不思議だなぁと思っていましたが、

やはり、遠くギリシャの話も何世紀もかかって日本に伝搬してきたのは確実だ、といわれているようです。

同様に、かの有名な「かぐや姫」の話は竹が育つ
ミナミアジアでは、よくある伝説のようで、やはりこの「かぐや姫」も
中国起源なのは間違いない、ということです。


このスサノオの話は、どう考えても、粗野で知性のない男だったのに、なぜか、八岐大蛇を退治する英雄になっていることを
慮ると、どうも、もともと二人の別人だったのが、
一人の「スサノオ」という神に統合されているのではないか、
といわれています。

もともと、神話も「出雲系」と「伊勢系」とありまして、
出雲の国は伊勢の国に敗れて、今日あるのだろう、ということで
たぶん、スサノオは出雲系の神と伊勢系の神のふたつの神が
ひとつに合体されたものだろう、ともいわれています。

実際に、伊勢のほうに旅してみるといろいろと面白い
ことに気づかされます。

やはり、京都とは、また別ですね。

神は荒ミタマの部分と和(にぎ)ミタマのふたつの部分が
ある、っていうのも興味深く、

神話ができる過程を考察するのも楽しいです。

Re: No title

アヒルのとーさん様

おはようございます。

スサノヲが主人公のアニメがあったんですね!!
観てみたいです。
スサノヲの物語はとても面白いので、絵本・漫画・アニメなどで
子供達にも、もっと知ってもらえたらいいなあと思います。

三浦氏の説「スサノヲの物語が弥生時代の始まりを象徴している」は
なるほどなあ、と思いました^^

Re: No title

sadafusa様

古今東西の本に通じていらっしゃるsadafusa様、
さすがの考察で、感動してしまいます。驚きです(@_@)

sadafusa様のコメントを読んで、デュメジルの「三機能体系」を思い出しました。

ご存知かもしれませんが、デュメジルの「三機能体系」とは、インド―ヨーロッパ語族神話の構造論的比較論です。デュメジルによれば、インド=ヨーロッパ語族は、古くから自分たちの社会が「祭司」「戦士」「生産者」の三つの身分から成り立つという観念を持っており、これを彼は「三機能体系」と名付けました。
デュメジルはまず、ローマ神話のジュピター、マルス、クイリヌスの三神が、インドにおけるブラーマン、クシャトリア、ヴァイシャの三色と相同的である事を証明し、更にはこの「三機能体系」が、ゲルマンをはじめとして、インドからケルト、北欧にいたるインド=ヨーロッパ語族に共通のプロトタイプであることをも示しました。デュメジルの比較神話学は、インド―ヨーロッパ文明とそれ以外の領域との交通関係も明らかにするもので、ヤマトタケルをはじめとする日本神話との比較については、デュメジルの弟子である吉田敦彦氏等が、詳細な研究を進めておられます。それによれば、こうした神話の伝播は「スキタイ系遊牧民→アルタイ系遊牧民→朝鮮半島→日本」と進んできたのではないか、ということです。

『竹取物語』は、日本及び外国の神話・伝承をてんこ盛りにした、非常に興味深いお話ですよね。

「出雲系」神話については、『100分de名著』の第三回、ヤマトタケルにつては第四回で扱っていましたので、
また拙ブログでまとめてみたいと思います。

神話伝承って、世界中みな繋がっているというのが、とてもスリリングで面白いですね~~!!

No title

まーさん

デュメジルの三機能体系は知りませんでした。

手塚治虫の「ブッダ」を読んでいたので、
おっしゃるように、
バラモン、クシャトリア、ヴァイシャ、スードラっていう
身分があるのは知っていました。
でも、そういうふうにギリシャの神と対応するのは
面白いですね!


また、デュメジルの本、読んでみます。

ご紹介ありがとうございました!

No title

神話も、こうして解説を伺うと、無秩序な自然を人間の文化が支配していく過程、と捉えられるのですね。
それを、天界では無秩序の象徴であったスサノヲが進めるというのは、ちょっと興味深いです。何か意味があるのでしょうね。
田んぼが最初の人工物だというのは、言われてみると、なるほどそうですね。

死んで新たなものが生じるというのも、実在の発展における重要な契機を示しているように思われます。

古事記って深いんですねー。
何も知らなかった私はただただ感心するばかりです。

ヤマタノオロチが川と言うのは納得ですね。

それにしても、多神教の教えには、必ずかなり人間チックな神様が入っているので面白ろいですね。どこが神様なの⁈と首をかしげたくなる傍若無人ぶり(笑)

Re: No title

sadafusa様

返信ありがとうございます。
手塚治虫の「ブッダ」未読です。
是非読んでみたいと思いました!

sadafusa様は、漫画も広範囲にわたって読んでいらっしゃって、
様々な分野に精通しておられ、すごいなあと思います。
以前、貴ブログで紹介されていた
「キカイダー」(でしたか?!違っていたらすみません)も、
ずっと気になっております(≧▽≦)

ワタクシも久々に、比較神話学の本が読みたくなりました。

Re: No title

Ariane様

「田んぼが最初の人工物」という見解は、ワタクシも非常に興味深く思いました。
縄文から弥生への移行を、神話ではこのように表しているという分析は、
とても分かりやすく、なるほど、と思わせられるものです。

無秩序の象徴だったスサノヲが、地上ではアマテラスの弟として、
秩序を推し進める神となるというあたり、
やはりワタクシもAriane様同様、何か意味があるのかと感じました。
そして、皆さまからいただいたコメントを拝読しますと、そこには
「出雲系神話」と「伊勢系神話」の融合によって生じた二面性の問題があるようだ、とか
はたまた「伊勢(アマテラス)」を上位、「出雲(スサノヲ?)」を下位と位置付けたい
何らかの意図が働いているのか??とか、妄想も含めて、色々な事を考えさせられました。

皆さまからのコメントが大変興味深く、また勉強になります。

Re: タイトルなし

凛様

多神教の神々の人間臭さって、すごく面白いですね~!!
ワタクシも同感です(笑)

今日読んでいた本に「日本古代の信仰の対象はヘビで、それは川とか山谷に例えられた」
というような記述がありました。
まさしくヤマタノオロチ伝説そのままですね。

縄文から伝わる日本古来の信仰と、大陸から渡って来た神話伝承と、仏教・道教・儒教等が、
一体どう混じり合って日本の神道や神話、精神文化が出来上がったのか、
非常に興味があります。
これは数学の公式のようにきれいに説明できる類の物ではないのかもしれませんが、
所説を学ぶことも含めて、ちょっと自分の中で整理してみたいなあと、
常々思っていました。

でも、難しそう~~(@_@)
もう一度大学に戻って研究してみたいです・・・

No title

しつこくレスをつけること、お許しください。

そういえば、たんぼの件で思い出したことありました。

馬に付ける「鞍」ってありますよね。
あれって、座る場所のことですが、

古くは、神様の座る場所というか「よりまし」のための
神聖な領域のことを指したようですよ。
御存じだったかもしれませんが。

たとえば、サクラは田植えの時期を知らせる花として
非常に重要な役目をしていました。

ので、サクラのサ=カミ、 クラ=坐る場所、
です。
京都の地名に、岩倉ってありますが、
あれも、おおきい自然物に、神が宿るとされていましたので、
岩倉も本当は岩鞍だったのではないかと
推察しています。

というふうに、酒もサケ、サ=神様、ケ=食べるもの
とやっぱり、それを飲めば酩酊して、人が神のよりましになる
と考えられていたようです。

面白いですね、日本語って。

Re: No title

sadafusa様

日本語の起源について研究された本などを読むと、とても面白くて、
更なる疑問もわいてきたりして、止まらなくなりますね~。

サ=神、クラ=座る場所、ケ=食べるもの

なるほどです!そういう言葉の組み合わせで日本語が出来ているわけですね。

原初、音と意味とは一体どうやって結びついたのでしょう??
そんなことまで気になってきます。
きりがないですね(汗)

No title

神話のルーツ、興味深いですね!

モンゴロイドの分布や、サツマイモのルーツなど、
他のジャンルの研究と合わせた考察なども読んだことがありますが、
物語とした楽しみたいタイプなため「なるほどなぁ」で終わってしまっていました。

次はヒーロー大国主あたりの出番でしょうか?
続き楽しみにしていますねv

Re: No title

くるみ様

モンゴロイドの分布・サツマイモのルーツと合わせた研究ですか!
面白そうですね^^
神話学研究には、文化人類学的アプローチも多くて、
とても興味深いです。
でも、ワタクシも「そうなんだ~~」
で終わっていたクチです(^^ゞ

次は、くるみさんのご推察通り、大国主の「出雲神話」が
取り上げられていました。
中々忙しさに取り紛れて、ブログ更新できないでいますが(汗)
暇を見つけて、まとめてみたいと思います!
プロフィール

まーさん

Author:まーさん
息子と夫と私、考え方も行動もてんでバラバラな3人で暮らしています(笑)でも仲良しです。
音楽、映画、読書が好き。芸術鑑賞、外国語、旅行も好きです。ゆ~る・じゃぱんでは、日本大好きまーさんが暮らしのに漂う日本の香り・日本文化をゆる~く綴っていきます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。