スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

まーさん超訳『竹取物語』~五人の求婚者②~

お正月、義父母の家に年始のご挨拶に伺った際、夫の従姉妹のことが話題になりました。彼女はまーさんと同年代で独身、仕事を持つ自立した女性です。

彼女について義父は言いました。
「今は仕事が充実しているからいいけど、定年退職したらどうするつもりなんだろうね。老後一人で暮らすのは寂しいよねえ。多分今は仕事が楽しくて、老後のことまで考えていないから、結婚しようという気も起きないんだろうけどね。」

この言葉を聞いてまーさんは、奇しくも今、超訳を施している竹取の翁の“ある言葉”を思い出しました(前回の部分です)。


翁はかぐや姫に、

「この世の人は、男は女にあふことをす。女は男にあふことをす。
その後なむ門広くもなりはべる。」

(人は皆結婚するのが道理です。そうしてこそ一族も繁栄するのです。)

「翁の在らむかぎりはかうてもいますがりなむかし。」
(この翁の生きているうちは独身でもいいでしょうが、その後は
どうなさるおつもりなのですか。)


と言います。それに対し姫は、

「なんでふ、さることかしはべらむ」
(どうして結婚しなければならないのでしょう、私には分かりません。)

と言うのです。


人間社会において、男女は結婚するのが習いであり、そうしてこそ一族の繁栄もあるのです、と道理を解く翁に対し、かぐや姫は「人として何を基準に生きるべきなのですか。世間的道理ですか、それとも自分の心の声ですか。」という、非常に根源的な問いを翁にぶつけます。

今でこそ男女共に、結婚するか独身でいるか、自由に選択できる時代となりました。しかし先の義従姉妹の話にもあるように、依然として「結婚するのが当たり前」「老後のためにも結婚しておくべき」という考えは、世間に根強く残っている気もします。特に女性に関しては「男と違って、良い夫を見つけて結婚すればいいのだから楽なものだ」という考え方が、未だに人々の口の端に上るのを耳にし、まーさんは心底驚いてしまうこともしばしばです(@_@)

もちろん生物学的には、種の繁栄という観点から、結婚・出産が必要不可欠であることは分かります。しかし現代においては、結婚形態も多様化し、必ずしも法的な結婚制度に縛られない男女の在り方(あるいは同性婚の在り方)も、徐々にではありますが(法的整備も含めて)前進の方向に向かいつつあります。また同様に、生涯独身を通す生き方も、個人の自由な選択肢として、現代では我々に当たり前のこととして開かれています。

それらを踏まえた上で、『竹取物語』の書かれた平安時代について考えてみますと、かの時代は一夫多妻制・通い婚――女性にとっての結婚は(和泉式部のように自由恋愛を謳歌した人もいましたが)、多くの身分ある女性にとって、孤独と寂寥感、あるいは表現し難いもどかしさを生み出す制度だったのではないかと、推察するのであります。


結婚とは一体何のためにあるのか――

種の繁栄のため
一族の繁栄のため(翁の考え)
老後を安泰に暮らすため(翁の考え)
女性を一種の所有物として扱うため(五人の求婚者の考え)
男女が様々な愛の形を確認し続けるため(後のかぐや姫の考え)

千年も昔の物語に、こうした今日的問題が既に指摘されているという事実に、まーさんは非常に深い驚きを覚えるのであります・・・


              ◇


まーさん超訳『竹取物語』~五人の求婚者②~


日が暮れるころ、五人の求婚者はいつものように集まった。

翁が出て来て言う。

「このように汚らしい我が家に、皆さまが長い間お通いになって下さることは、

この上もなく恐縮に存じます――

先ほど姫に『この翁の命は今日明日とも知れぬのだから、

このように結婚を申し出て下さる皆様方のことを考え、よく思いを

しっかり決めて、どなたかにお仕え申し上げなさい』と申しますと、

姫は『その通りですね。五人の公達はいづれも優劣がございませんので、

わたくしの見たいものを見せて下されば、それでご愛情の程度が分かるでしょう。

お仕えすることはそれによって決めたいと思います』と言うので、

わたくしも『それは良いお考えです。そうすれば皆様も、

お恨みごとなく決着をつけることができるでしょう』と言いました。」

五人の貴公子も、

「それでよかろう。」

と言うので、翁は御簾の中に入って、かぐや姫にその旨を伝える。

かぐや姫は言う。

「石作の皇子には、仏の御石の鉢というものがあります。

これを取ってきて見せて下さい。」

「くらもちの皇子には、東の海に蓬莱という山があると聞きます。

そこに、銀を根とし、金を茎とし、白玉を実として立っている木があります。

それを一枝折ってお持ち下さい。」

「阿部の右大臣には、唐土にある火鼠の皮衣を下さい。大伴の大納言には、

龍の頸に五色に光る玉があります、それを取って下さい。石上の中納言には、

燕の持っている子安貝を取って下さい。」

これを聞いて翁は、

「どれもこれも、お持ちするのが難しいもののようですねえ。

この国にあるものではないようですし・・・

このように難しいことをどうやってお伝えしたものか・・・」

と言う。しかしかぐや姫は、

「どうして難しいことがありましょうか。」

とにべもなく言う。だから翁は仕方なく、

「とにもかくにも、皆様に申し上げてみましょう。」

と言って出て来て、

「姫はこのように申しております。姫の申し上げたものをお見せ下さい。」

と申し上げる。これを聞いて五人の皇子たち・上達部(かんだちめ)は、

「いっそのこと、『この辺りを通り歩くことさえ止めて欲しい』

とおっしゃって下さったらいいのに・・・」

と言って、すっかり気をくじかれて、皆帰ってしまった。


しかしそれでも、五人の貴公子は、この姫と結婚しないでは

この世に生きていられない気持ちがするので、それぞれに姫の難題を解こうと、

必死になって画策するのであった。





次回に続きます。


参考文献
*『日本古典文学全集8 竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語』(小学館)
*『岩波古語辞典』(大野晋 佐竹昭広 前田金五郎 編)



にほんブログ村 歴史ブログ 日本の伝統・文化へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

かぐや姫の結婚観

まーさん、あらためまして
新年おめでとうございます。新年早々火事で新幹線が走らなくなり
関西ー東京間の帰省客はパニクっておりましたが、おかげさまで伊勢のあちこちを回れ、それなりに楽しい旅が出来ました。^^
やっと今までのブログ環境に戻れました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。m(__)m

いま思うと、かぐや姫はとてもミステリアスでどこか宇宙的なお話ですね。結婚観にしても、1000年以上前の女性なのに、現代女性の価値観を思わせる新しさがありますし、単なるおとぎ話と違っていろんなテーマが提示されていますよね。
まーさんの解説が素晴らしいので、物語にそのような拡がりを感じさせてくださるのかもしれません。^^

しかし、男性の愛と執着力というのだけは、昔も今も変わりませんね。
奪う前までは、これでもかと必死に頑張るさまは、哀れなほど滑稽ですが(笑)それでも凛として手を緩めず見届けるかぐや姫の冷徹さが気持ちいい反面、やはりこの世のものでない別世界の人を思わせます。
やはり、宇宙人だったのでしょうか。

Re: かぐや姫の結婚観

MIUMIU 美雨様

こんにちは。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます!!

新年早々コメントをお寄せいただき、ありがとうございます^^
火事による新幹線の不通は、大変な事態でしたね。
しかし伊勢のあちこちを回ることがお出来になったとのこと、
楽しい旅行で、本当にようございました(^^)
いつかワタクシも、伊勢周辺を時間をかけて巡ってみたいですv

ところで『竹取物語』ですが、本当に不思議な物語ですね。
悩みも苦しみもない天女。これはやはり、古代の人が見た宇宙人だったのかもしれません。

単なる所有欲に駆られてかぐや姫を手に入れようとする輩には、
非常に冷酷な手段を取る彼女が、
人々との関わりを経て、徐々に「人間世界の愛」について考えるようになる。
その姿が、現代の我々にも多くのことを訴えかけてくる、
それが『竹取』なのではないかと思います。

これからも少しずつ現代語訳をしてまいりたいと思いますので、
お暇があれば、どうぞ覗いて見て下さい^^よろしくお願い致します!

自立

かぐや姫さんは、自立していたんですね。

面白いわ。(義父さまのお話も含め)


結婚はしてもしなくてもいいけれど、自立はした方が誰にとってもいいことのような気がします。

「自立」の定義も難しいけれど、「自分の人生を自分で責任持って生きるしかない」ということを自覚することでしょうか。

その前提で、いろいろなことの選択が広く生まれてくる気がします。

誰もが、ほんとうのいみで、自由であってほしいと思います。

Re: 自立

まるまるまるた様

こんにちは。
新年よりご訪問・コメントありがとうございます^^

自立=「自分の人生を自分で責任持って生きるしかない」ということを自覚する、
まさしくその通りですね~~!
人間が自立することに、結婚の有無は関係ありませんよね。

人やモノに依存すると、それだけ心の自由が奪われ、自他ともに束縛を強いることとなり、
何につけても息苦しい人生になってしまうのではないかと思います。

かぐや姫は自立した女性であった・・・
そうですね、言われてみれば、彼女は自立を目指す戦いをしていたのかもしれませんね。

No title

こんな昔にこのようなことを書いた作者が本当に凄いなと思いました。
それともその頃の女性も皆そのように感じていたのかしら?
1000年経っても人間の基本的なところは変わらないんだなと思いました。

それにしても、今更ですが、マーさんの古文力って素晴らしいですね。
私は苦手でしたので、全然原文の意味がわかりませんσ(^_^;)

Re: No title

凛様

こんばんは。
新年よりご訪問・コメントありがとうございます!!

太古の昔から数多の書物が編まれてきましたが、
その中で「古典」として受け継がれてきたものには、
やはり時代を超えて人々に訴えかける素晴らしい力が
秘められているのですね。

人の思いって、どの時代にも変わらないモノなのかもしれません・・・

ワタクシの古文力・・・汗
一応大学で専攻していたので、ある程度のことは分かりますが、
『源氏物語』のような特別難解な文章になると、
あれれ・・??
実はスラスラ読むことが出来なかったりします(撃沈~~)

そうですなぁ

今まで常識とされて来たものから
外れると、なんやかんやと言われる・・・・
幸せは人それぞれなので、型にはめるのは
どうかなぁ?って思いますねぇ。
その人の事を思って・・・・なんでしょうけど。

夫イトコさんからすると、ほっといてくれや!
でしょうなぁ。

Re: そうですなぁ

マルボーズ隊員様

こんにちは。

そうなんですよ~~
「自分の常識が人の常識」っていう時代は
もう終わったと思うんですよね。

かぐや姫は、千年前から「既成概念の打破」を
試みていましたが(すごっ)。

これからの人は、いろんな価値観を俯瞰的に見て
容認できるようでないと、
ある意味生き残っていけないんじゃないでしょうか。。。(◎_◎;)




プロフィール

まーさん

Author:まーさん
息子と夫と私、考え方も行動もてんでバラバラな3人で暮らしています(笑)でも仲良しです。
音楽、映画、読書が好き。芸術鑑賞、外国語、旅行も好きです。ゆ~る・じゃぱんでは、日本大好きまーさんが暮らしのに漂う日本の香り・日本文化をゆる~く綴っていきます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。